2022年に採集したアオマダラタマムシを生態観察目的で単独飼育してみた結果を公開します(コロナ禍における在宅勤務の成果)
■採集データ
・採集日時:2022年5月29日 AM11:00
・石川県能美市
・天候データ:晴天、無風、気温26.7℃
■2022.05.30
プラケース(230mm×150mm×170mm)内はオガクズ等のマットなしで転倒からの復帰用に少量の枯葉を入れて飼育開始
■2022.05.31
後食を確認(オオシマザクラ)
・数種のサクラの葉、および若葉と固い葉を与えて、好みを知る実験
→サクラの種類に関係なく食べる(ソメイヨシノ,ヤマザクラ,ヒガンザクラ,八重桜等)
→新芽ではなく固い葉だけを好んで食べる
・糞は他の食植性甲虫類と同様で粒または縦長の糊状
・昼間帯はケースの中を活発に動き回るが餌を食べることは殆ど無い
→餌は夕方以降の時間帯に摂取することが多い
→摂取後は葉上で長い時間静止する
→朝方のまだ暗い時間帯もよく食べる
→一箇所で食べる量は概ね5~10mm四方程度で決して多くはない
→食痕は独特ではなく葉の外周をランダムに齧る
・活動は概ねAM10:00頃以降から活発化する
・一週間経った2022年6月6日現在でも触角、フセツともに状態良好
■2022年6月8日 本日気温低く(19℃前後)活動が極めて鈍い。おそらく野外でも20℃以上が活動条件になると想定する
・M公園よりアオマダラタマムシの脱出孔があるクロガネモチの落枝を持ち帰り煮沸消毒後ケースに投入
→産卵促進のためにノコギリで数本の筋を入れてみる
→でもまぁ♂なら産むわけもない
■2022年6月12日 採集から二週間経過するも落ちる様子なくケース内で活発に活動
■2022年6月19日 採集から三週間経過。衰弱の気配なし。餌の交換は2日に1度のペースに落ち着く。餌はエノキやケヤキ等も試して見たいが飼育頭数最小かつケースのサイズ的に実験不可能。
・昼間はケース内の壁を登って落下を繰り返すが登る壁は部屋の窓側に向いた壁が殆ど。ケースの位置を逆転してもやはり壁側に登ることから太陽光を認識していると想定する。
■2022年6月22日 ペットボトルのキャップを利用した飼育ケース内ミニ花瓶に餌であるサクラの枝を投入して様子を見る。壁ではなく葉上を歩き回ることが増えた様に感じる。また葉も長持ちするため餌交換の頻度が変わる見込み(現在4日前に交換した葉のまま)
■2022年6月23日 餌の減りが悪い。よく見るとケース内の落葉にカビが発生しているようだ。水を入れた花瓶作戦は失敗だったかも知れない。道楽せずに2日に1度のペースでカビ発生抑止になる可能性がある。
■2022年6月26日 新しい発見として落ちた枯葉を食べる様子を観察した。ヤマトタマムシと比較して長期間飼育に耐える理由の一つかも知れない。
■2022年6月28日 プラケースの壁に登り辛そうな挙動になる。脚の吸盤の劣化かゴミの付着または脚力劣化の可能性もある。身体の部品の劣化損傷は観察出来ない。
■2022年6月30日 目に見えて活動鈍る。餌も殆ど減らなくなったが気が付くと場所移動(ケース内の床を歩行するのみ)している。
■2022年7月2日 死亡を確認。
■以下総括
・この種の飼育には水分不要。但し採卵目的時は変わる可能性もある。
・餌のサクラの葉は木からとって2日目程度でも食べるので毎日の交換は不要だが3日目くらいから葉の質が変わる。
・今回の採集時が発生直後と想定すると交尾と産卵は元気に飛び回れる発生から20日程度ではないかと思われる。
・機会を見て累代飼育の実験を行う予定。
2022年11月15日 白山好虫会
LastUpDate 2022.11.15