石川県に生息するカミキリムシについて

Longicorn

美麗種も多く種数もかなり多いカミキリムシは、また多くの人をも魅了しています。そのため人気のある種が愛称(特に学名を元にした愛称)で呼ばれたり語られることが少なくありませんが、このコンテンツ内では極力一般的な「俗名(日本語名称)」を使用しています。[種名・亜種名については、本来は学名を使用すべきかも知れませんが、ここでは参考文献(「日本産カミキリムシ」等)を元に、現時点(2005年9月末時点)で分類・同定されている種・亜種の俗名を使用しています。また種数については亜種を含んだ数で表現しています。]

■はじめに… 以前は「カミキリムシ科ホソカミキリ亜科」に分類されていたホソカミキリの仲間ですが、触角の生える位置がカミキリムシ科とは異なっているため、最近になって「ホソカミキリ科」に分類されており、このコンテンツ内でもそれに習うこととします。

ホソカミキリ:この仲間は国内に亜種を含んで4種生息しているが、石川県内で確認されているのは本種のみ。

カミキリムシ科に属する虫は国内に900種以上生息しており、そのうち石川県では約300種が確認されています(2005年現在:中には港でシベリア材についていたことが確認されているアオヒメスギカミキリや、秋田県産のアスナロ材に入っていたことが確認されているビャクシンカミキリなども含んでいる)。カミキリムシ科は更に多くの亜科・族等に細かく分類されており、そんなグループごとの特徴などについて、石川県で確認されている種を中心に解説します。

■ニセクワガタカミキリ亜科,ノコギリカミキリ亜科,クロカミキリ亜科… 「ニセクワガタカミキリ亜科」では、国内に「タイワンニセクワガタカミキリ」と「アマミニセクワガタカミキリ」の2種が生息していますが石川県で生息確認はされていません。

コバネカミキリ:ノコギリカミキリ族。ブナの立ち枯れに多いが夕方の材置き場でも見れる確率は高い。

「ノコギリカミキリ亜科」では、国内で「コゲチャヒラタカミキリ族」,「トゲフチオオウスバカミキリ族」,「ウスリーオオカミキリ族」,「ウスバカミキリ族」,「ノコギリカミキリ族」の計5族22種が確認されており、このうち石川県では3族5種が確認されています。このグループに含まれるベーツヒラタカミキリは石川県が国内生息域の北限近くにあたるため個体数は少なく、また平野部でのホスト(スダジイ等のシイ類)等の環境が良好に確保されている必要がありますが、開発等により年々生息域が狭まってきており、石川県の絶滅危惧種にピックアップされています。その他このグループには、ウスバカミキリ,ノコギリカミキリ,ニセノコギリカミキリなど、割と馴染み深い種が含まれています。

クロカミキリ:外灯に飛来した。ホストはアカマツ、クロマツ、モミ、スギ、ヒノキ等の針葉樹。

「クロカミキリ亜科」では、国内で「クロカミキリ族」,「ケブカマルクビカミキリ族」の2族15種の生息が確認されており、このうち石川県では「クロカミキリ族」に含まれる8種の生息が確認されています。ニセクワガタカミキリ亜科とノコギリカミキリ亜科は、共に良く発達した脚に特徴があり、ホストの樹皮下に生息するのに適した体をしています。またクロカミキリの仲間はホスト(マツ類等の針葉樹が多い)の伐採木で見つかることが多いようです(クロカミキリは街灯にも多く飛来します)。これらのグループのカミキリムシは比較的地味な色の虫が多く、そんな中では例外的に美麗なケブカマルクビカミキリについては、残念ながら石川県での確認はありません。

キベリクロヒメハナカミキリ:ブナ帯などの花で最も普通に観察出来るものの一つ。

■ハナカミキリ亜科,ホソコバネカミキリ亜科… 「ハナカミキリ亜科」は大きく「ハイイロハナカミキリ族」と「ハナカミキリ族」に分類され、「ハイイロハナカミキリ族」には「ヒメハナカミキリ属」が含まれており、「ヒメハナカミキリ属」はさらに「ヒメハナカミキリ亜属」,「チャイロヒメハナカミキリ亜属」,「フタオビヒメハナカミキリ亜属」,「コトヒメハナカミキリ亜属」に分類されています。国内では約180種,石川県内では80種近くが確認されています。春から盛夏にかけて訪花するタイプが多く、サワフタギやウツギ類の花などで多くの種を観察することが出来ますし、また中にはマツ類に訪花するタイプや伐採木で多くを観察出来るタイプもいたりしますが、成虫の活動時期が短い種も多く、観察には種毎の発生時期や天候にも大きく影響されます。

オオホソコバネカミキリ:ブナ帯の立ち枯れ等で見れるがこの個体は外灯に飛来した。

このグループは小型種が多く、また近似種との同定が困難なものも多くおり、中でもピドニアと呼ばれる「ヒメハナカミキリ属」は特に分類が難しく、カミキリムシ愛好家の中にさえ敬遠する方もいらっしゃるほどです。しかし日本で独特に分化したヒメハナカミキリ属は種類も多い上に同種であっても地域差等で上翅の斑紋(ヒメハナカミキリ属の同定には非常に重要)に違いがあったり、逆に別種であっても良く似た斑紋であったりするうえに、幼虫を含めた生態が解明されていない種が非常に多くいるため、愛好者の間では研究対象として大変に面白い素材となっています。

「ホソコバネカミキリ亜科」は、学名=Necydalis から、ネキの愛称で親しまれる蜂に擬態したカミキリムシのグループです。国内では12種が確認されているこのグループの中で、石川県ではオオホソコバネカミキリとクロホソコバネカミキリとオニホソコバネカミキリの生息が確認されています。学名からの愛称「ソリダ」の名で愛好者を魅了しているオオホソコバネカミキリは、石川県ではブナ帯の広葉樹の立枯れ等で観察することが出来ますが数は多くありません。またクロホソコバネカミキリは、同所もしくはもう少し高標高の場所で観察された記録が残っていますが、こちらも生息数はそれほど多くないと想定しています。オニホソコバネカミキリ(Necydalis gigantea)が石川県内で確認されたのは2000年以降でこれもまた生息域は限定的かつ個体数も少ないと思われます。

キマダラミヤマカミキリ:成虫は樹液や花粉を後食する。基本は幼虫で越冬だが成虫越冬する個体もいる。

■カミキリムシ亜科… 国内で確認出来るカミキリムシ科で二番目に大きいグループのカミキリムシ亜科は、更に多くの族に分類(国内では18の族が確認されています)されています。このうちイエカミキリ族,ムネウスバカミキリ族,モモブトコバネカミキリ族の3族11種については石川県で確認されていません。その他について石川県で確認されている種を中心に紹介します。

アオスジカミキリ:白台紙撮影。幼虫のホストはネムノキ。それを狙うヒメウマノオバチがネムノキに集まる。

まずミヤマカミキリ族から。国内に9種生息しているミヤマカミキリの仲間は石川県ではミヤマカミキリ,キマダラミヤマカミキリ,キイロミヤマカミキリの3種が確認されています。このうちキイロミヤマカミキリは体長が最大20mm程度の中型のカミキリムシで石川県が国内分布の北限にあたり生息地も限られているため県の絶滅危惧種に指定されています。対してミヤマカミキリとキマダラミヤマカミキリは石川県内での分布域も広く県内各地で観察することが出来ます。特にミヤマカミキリは各種広葉樹の樹液や街灯にも良く集まる最も観察しやすいカミキリムシの1つです。アオスジカミキリ族では、アオスジカミキリ,ベーツサヤカミキリ,マルクビケマダラカミキリの3種が石川県内に生息しています。アオスジカミキリは街灯などに良く飛来するため容易に観察することが出来ます。またマルクビケマダラカミキリは木製品の害虫としてよく知られています。ベーツサヤカミキリについては石川県が国内分布の北限にあたるため県の絶滅危惧種に指定されており県南部の限られた場所だけで確認されています。

テツイロヒメカミキリ:ホストは、ケヤキ,アカメガシワ,ソメイヨシノ,ヒメラヤシイダ,およびイチョウ。

トビイロカミキリ族では、国内に生息している6種のうち、トビイロカミキリ,トゲヒゲトビイロカミキリの何れもオレンジ色に似た鮮やかな鳶色をした2種が石川県内で確認されています。

コジマヒゲナガコバネカミキリ:採集後のフィルムケースの中。ホストはキブシやミズキ、クリなど。

ヒメカミキリ族の国内生息種は、ヨツボシカミキリ属(1種)アメイロカミキリ属(2種)ヒメカミキリ属(11種)マルクビヒメカミキリ属(1種)クロオビヒメカミキリ属(1種)に分類され、そのうち石川県ではヨツボシカミキリ(ヨツボシカミキリ属),アメイロカミキリ(アメイロカミキリ属),ヨコヤマヒメカミキリ(ヒメカミキリ属),テツイロヒメカミキリ(ヒメカミキリ属)の生息が確認されています。アメイロカミキリ族は、国内で25種,石川県では6種の生息が確認されています。これら(トビイロカミキリ族,ヒメカミキリ族,アメイロカミキリ族)は比較的近縁で、色や大きさ等も良く似ているうえ小型種も多いため、同定は慎重に行う必要があります。ヒゲナガコバネカミキリ族では、国内に生息している25種のうち、クロツヤヒゲナガコバネカミキリ,ホソツヤヒゲナガコバネカミキリ,オダヒゲナガコバネカミキリ,コジマヒゲナガコバネカミキリ,カエデヒゲナガコバネカミキリの5種が石川県内での生息が確認されています。クロツヤヒゲナガコバネカミキリについては、石川県が国内生息地の西限にあたり、元々狭い生息地が更に減少傾向にあることにも起因して県の絶滅危惧種に指定されています。ホタルカミキリ族では国内に生息している5種のうち、ホタルカミキリ1種のみ、石川県での生息が確認されています。この族に分類されているクビアカモモブトホソカミキリはカミキリムシには珍しく単為生殖を行うようです。

ホタルカミキリ:晩春から初夏にかけて野外活動する成虫を観察出来る。ホストはネムノキ、クヌギ、クワ等。

ホソバネカミキリ族ではトラフホソバネカミキリ,クスベニカミキリ族ではクスベニカミキリのそれぞれ1種が石川県でも生息確認されています。ホソバネカミキリ族の仲間は、それぞれのホストの生木の枝に食入し、蛹化前に枝を切り落として落下させるといった一風変わった生態をしていますが、その理由については諸説あるようで定かでありません。

トラフホソバネカミキリ:材置き場にて。通称「トラニウス」ホストはアカメガシワ、シイ等

ルリボシカミキリ族では、学名から「ロザリア」の名で親しまれるルリボシカミキリの生息が石川県でも確認されています。このグループはヨツオビハレギカミキリ属とルリボシカミキリ属に分類され、ルリボシカミキリ属は更にルリボシカミキリ亜属とベニボシカミキリ亜属に分類されています。いずれの種も美麗ですがルリボシカミキリ以外は暖地性で奄美大島や先島諸島等だけが生息地となっているため生態観察する機会は少ないかも知れないです。次もまた美麗種揃いのアオカミキリ族です。が...このグループの種は独特のニオイをまとっており、そのニオイは鼻を近づけて嗅げばわかると言ったレベルでは無く、手に持ったりすれば勿論の事、近くに潜んでいるだけで存在がわかる程の強力なニオイ(正直、異臭です...)を出します。

ルリボシカミキリ:訪花したり広葉樹の樹液にも来る。因みに市販されている昆虫ゼリー等での飼育も可能

そんな綺麗だけどくさいアオカミキリ族は、アオカミキリ属,ジャコウカミキリ属,オオアオカミキリ属に分類され、オオアオカミキリ属は更にミドリカミキリ亜属,オオアオカミキリ亜属,アカアシオオアオカミキリ亜属に分類されています。国内では全部で9種生息していることが確認されており、そのうち石川県では、ミドリカミキリ,オオアオカミキリ,アオカミキリ,アカアシオオアオカミキリの4種の生息が確認されています。

オオアオカミキリ:シシウドに訪花。伐採木に来ることもある。ホストはサワグルミ、ドロノキ等

ベニカミキリ族は、ムモンベニカミキリ属とベニカミキリ属に分類され、国内ではムモンベニカミキリ(ムモンベニカミキリ属)とベニカミキリ属(ベニカミキリ亜属)のモンクロベニカミキリ,ヘリグロベニカミキリ,ベニカミキリの合計4種が生息しており石川県ではモンクロベニカミキリを除く3種の生息が確認されています。ベニカミキリは竹がホストなので竹薮が豊富な地域でよく出会えます。

ベニカミキリ:竹林の住人。花にも良く来る。この個体は羽脱直後なのか、まだ触角に抜け殻が残っている。

スギカミキリ族は、国内で生息が確認されている13種中、8種が石川県で確認されています。前述したビャクシンカミキリもこの仲間で、石川県に定着しているかは疑問もありますが、他の昆虫も含めて人為的に移入され、その地に定着するものは少なくありません。スギカミキリ族と言う響きからはスギの害虫揃いの様にも聞こえますが、石川県にも生息しているヨツボシチビヒラタカミキリなどは、コナラやクヌギ等の広葉樹に付き、他の種も種毎にホストは多様です。

スギカミキリ:春早い時期に日当たりの良いボロボロの杉に付く。公園等の人工的な環境でも発生する。

トラカミキリ族は、国内で生息が確認されている78種中、24種が石川県で確認されています。この仲間は昼行性のものが多く訪花性も強いのですが発生木でも多くを確認する事が出来ます。またクビアカトラカミキリとブドウトラカミキリ,エグリトラカミキリとクロトラカミキリ等、よく似た斑紋の種がいるため同定には注意が必要です。

トラフカミキリ:ホストであるクワ古木の減少に伴い生息地も減りつつある。

トラカミキリ族の近縁にはトガリバアカネトラカミキリ族がおり、こちらはシロトラカミキリ属,トガリバアカネトラカミキリ属,エゾトラカミキリ属,ケブカトラカミキリ属に分類され、トガリバアカネトラカミキリ属は更に3亜属に分類され、国内で13種,石川県では6種の生息が確認されています。トラカミキリ族とトガリバアカネトラカミキリ族は後胸側板の違いで区別されています。

マツシタトラカミキリ:トガリバアカネトラカミキリ族。花にいた個体。ホストはミズナラ、コナラ、クリ等

■フトカミキリ亜科… 国内で確認出来るカミキリムシ科の中で最大のグループのフトカミキリ亜科は、更に多くの族に分類(国内では20の族が確認されています)されています。このうちウスアヤカミキリ族,フサヒゲルリカミキリ族,アカガネカミキリ族,ハラアカコブカミキリ族,シロカミキリ族の、5族(25種)については何れの種も石川県で確認されていません。その他のグループについて石川県で確認されている種を中心に見て行きましょう。

ゴマフカミキリ:伐採木に多い。ホストは各種広葉樹を中心に、ツガ、カラマツ、ヒノキ等の針葉樹まで。

ゴマフカミキリ族は、国内で生息が確認されている34種中6種が石川県で確認されています。地域差や個体差で同じ種でも斑紋に差があったりするため同定は意外と難しくなる場合もあります。また小型の個体の場合は他族(サビカミキリ族等)とも見間違うこともあるので注意が必要です。シラホシサビカミキリ族は、国内で生息が確認されている63種中10種程が石川県で確認されています。このグループもまた前述のゴマフカミキリ族と同様に良く似た種や他族(特にサビカミキリ族)とも似ていたりする上に小型種も多いため、同定に関する課題も同様のものがあります。

シナノクロフカミキリ:シラホシサビカミキリ族。各種広葉樹がホスト。細枝だけのソダ等にもよく集まる。

ドウボソカミキリ族は、国内で生息が確認されている18種中4種が石川県で確認されています。胴が細いことが名前の由来で、小型の種が多く、体だけでなく触角を伸ばしてピッタリと密着する様にホストの枯木に擬態するため見つけ難い場合が多い様です。成虫で野外越冬することで有名なタテジマカミキリはこのグループの一員です。

タテジマカミキリ:ヤツデやカクレミノのウコギ科がホスト。石川県では少ない。この個体は外灯に飛来した。

サビカミキリ族は、国内で生息が確認されている35種中、ニイジマチビカミキリ、ヒメナガサビカミキリ、マルモンサビカミキリ、アトジロサビカミキリ、キリサビカミキリ、エゾサビカミキリ、トガリシロオビサビカミキリ、アトモンサビカミキリ、ナカジロサビカミキリ、ワモンサビカミキリ、クワサビカミキリ、ハイイロヤハズカミキリの12種が石川県で確認されています。小型種が多く木地に似せた地味な色の種が多いため枯木や伐採木によく集まり種によっては灯火にも飛来します。

アトジロサビカミキリ:ホストはクリ,クワ,ケヤキ,アカメガシワ,フジ,スギなど多様。灯火にも飛来する。

コブヤハズカミキリ族は、大きくコブヤハズカミキリ属とセダカコブヤハズカミキリ属およびヤクシマコブヤハズカミキリ属に分類されており、国内に生息する17種中、石川県にはチュウブマヤサンコブヤハズカミキリが生息しています。後翅が退化して飛べないことがこのグループの大きな特徴で、それ故に地域差などもあったりして、特にマヤサンコブヤハズカミキリについては地域毎の差異を亜種とせず、系統化しての様々な研究が進められています。少し以前は稀なカミキリムシのひとつだったコブヤハズカミキリですが、最近は林道整備なども進み、以前ほど苦労せずに観察しやすい環境になりつつあります。

チュウブマヤサンコブヤハズカミキリ:愛好者の間で種毎に愛称で呼ばれる「コブヤハズカミキリ」の仲間。

ヒゲナガカミキリ族は、更にビロウドカミキリ属に分類されている種を含んで国内に73種,石川県には19種が生息しています。中大型種が多いこのグループは、名前の通り触角が長い種が多く、またその触角の第1節先端に特徴があります。このグループに含まれるマツノマダラカミキリは、マツノザイセンチュウを宿して松枯れ病を伝播させるとのことから、害虫として薬品散布により駆除されてきたカミキリムシの一つですが、散布した薬品で松枯れ病の伝播が弱まった事実は少なく、逆に害の無い付近に生息する他の昆虫含む動物に大きな影響を与えてしまったとの報告もあります。

ヒゲナガカミキリ:街灯に飛来した。その名が示す触覚の長さはもとより、前脚の長さ,大きさ,強大さも特筆物。

シロスジカミキリ族は、クワカミキリ属とシロスジカミキリ属に分類されて、国内ではクワカミキリ属3種,シロスジカミキリ属2種が生息しており、そのうち石川県ではクワカミキリ属のクワカミキリとシロスジカミキリ属のシロスジカミキリの生息が確認されています。両種とも様々な広葉樹に集まり生木に傷を付けて産卵し、そのためリンゴやクリ,イチジク等の果樹園では害虫となりますが、自然下においてはクヌギやコナラ等に付けた傷から樹液が染み出すことで、各種昆虫を育む餌場を提供しています。

シロスジカミキリ:名前の由来のシロスジ模様は発生直後は「黄スジ」だが時間経過で次第にシロスジになる。

ヒゲナガゴマフカミキリ族では、国内,県内共にヒゲナガゴマフカミキリ1種の生息が確認されています。県内では主にブナ帯に生息しており、比較的新しい倒木に多く集まりますが生息数自体はあまり多く無い様です。和名の「ゴマフカミキリ」は斑紋の配置模様がゴマフカミキリと似ていたために付いたもので分類学的にはゴマフカミキリ族とは異なる種です。

ヒゲナガゴマフカミキリ:ブナの倒木に付く。足を広げてじっとしていると迷彩模様で殆ど見分けがつかない。

シモフリナガヒゲカミキリ族は、シモフリナガヒゲカミキリ属とエゾナガヒゲカミキリ属に分類されて、国内ではそれぞれ1種の生息が確認されており石川県ではエゾナガヒゲカミキリ(エゾナガヒゲカミキリ属)1種の生息が確認されています。本種は触角を伸ばして閉じることで樹木や鳥の糞などに擬態する習性があるため、発見を困難にしていると想定しています。県内記録は少なめですが本会では2006年7月に採集・確認出来ました。

エゾナガヒゲカミキリ:自販機の灯に飛来したと思われる個体。この画像は採集直後で容器内で擬死している。

コブヒゲカミキリ族は、国内に13種,石川県には、セミスジコブヒゲカミキリの1種が生息しています。このグループは♂の触角の第3節がコブの様に膨らむことが特徴で、名前の由来になっています。♀のコブは♂ほど大きくなりませんので同定には注意が必要です。

セミスジコブヒゲカミキリ:ホストは各種広葉樹の他、モミ、アカマツ、スギの針葉樹にも付く。

アラゲカミキリ族は、国内で37種,石川県ではヒトオビアラゲカミキリ、フタモンアラゲカミキリ、フタオビアラゲカミキリ、ジュウジクロカミキリ、クモノスモンサビカミキリ、カッコウカミキリ、チビコブカミキリ、シロチビコブカミキリ、ハイイロツツクビカミキリ、ドイカミキリ、ホソヒゲケブカカミキリ、トゲムネアラゲカミキリ、クリイロチビケブカカミキリ、ホンドヒメシラオビカミキリ等の生息が確認されています。このグループには各種広葉樹などの枯枝に集まる小型種が多く生息数も少なめの種が多いため、観察は十分に行って、採集するにはビーティングが有効でしょう。

ハイイロツツクビカミキリ:ホストはサワグルミ、クマシデ、アケビ。この個体の発見は殆ど偶然。

ネジロカミキリ族は、国内にヒメシラオビカミキリ,ホンドヒメシラオビカミキリ,ネジロカミキリの3種が生息しており、石川県ではヒメシラオビカミキリ以外の2種の生息が確認されています。ホンドヒメシラオビカミキリはマツ類の,ネジロカミキリは広葉樹の、それぞれ枯枝などで観察出来ますが生息数はあまり多くありません。ヤマナラシノモモブトカミキリ族は、国内にヤマナラシノモモブトカミキリ,ゴイシノモモブトカミキリ,エゾトゲムネカミキリの3種が生息しており、石川県ではヤマナラシノモモブトカミキリ以外の2種の生息が確認されています。山地系で各種広葉樹の枯枝や、時には街灯等でも観察出来ますが生息数はあまり多くありません。

ヒゲナガモモブトカミキリ:1996年に別亜種から統一されるまでは名前の前に「ホンド」が付いた。

モモブトカミキリ族は、国内に52種,石川県ではゴイシモモブトカミキリ、ヒゲナガモモブトカミキリ、ナカバヤシモモブトカミキリ、ニセゴマダラモモブトカミキリ、トゲバカミキリ、ホウノキトゲバカミキリ、キッコウモンケシカミキリ、ガロアケシカミキリ、アトモンマルケシカミキリ、クモガタケシカミキリ、シロオビゴマフケシカミキリ、ケシカミキリ等の生息が確認されています。このグループの全種が「モモブト」かと言うと、見た目そうではない種も多くいるので図鑑などで検索する場合も注意する必要があります。

イッシキキモンカミキリ:自然度の高い低山のクワ,ヤマグワの大木で見れる。クワ大木の減少=生息地減少。

トホシカミキリ族は、国内に77種,石川県では34種の生息が確認されています。中型のものが多く、中には金属光沢をまとったり鮮やかな斑紋を持つ美麗種が多いことがこのグループの特徴の一つになっています。種数が示すように時期と場所によっては色んな種が観察出来るので、種毎のホストと発生時期を確認した上で、葉上,枯木,時には灯火などを探して見ると良いでしょう。また、ここ10年前後でソボリンゴカミキリ、ホソキリンゴカミキリの生息地がかなり広がった印象がある。もちろん時期にもよるが金沢市内でもちょっと山側へ行けば普通に見れるようになった。

ルリカミキリ:ホシベニカミキリが公園のタブノキの害虫化した様に、この虫もすっかり公園害虫の仲間入り。

ルリカミキリ族は、国内に生息する2種のうち、石川県ではルリカミキリ1種の生息が確認されています。美麗ですがバラ科の植物を加害して時には枯らしてしまうこともある害虫でもあります。かつて県内の平地や低山地のホストで観察出来るが生息数は多くない印象でしたが、最近はよく公園に植えられているヒメリンゴ等についており、すっかり公園害虫としてのイメージが定着しつつあります。

(種数や分布数,分類等については、現時点のものです)

2003年11月26日 白山好虫会

LastUpDate 2017.02.11