クワガタムシ図鑑(石川県生息種)

石川県内で確認出来る種をピックアップしています。記事内容は全て本会にて独自調査した結果による経験則的なもので他のサイトや図鑑からの引用は殆ど行っていません。よって学術的観点から見た場合の誤りを含んでいる可能性があります。

ミヤマクワガタ

Lucanus maculifemoratus Motschulsky

コナラに付くミヤマクワガタ♂♀

■■記事■■

県内の山間部寄りに多く生息する。灯火に多く集まるわりに昼間の樹液にもよく集まる。また昼間は樹液の出る木の根元などに溜まった落ち葉の下からも良く見付かる。気性が荒く喧嘩っぱやいがノコギリクワガタなどの大型種には敵わない。また同種間でも雄同士は絶えず闘争を繰り返すため成虫飼育時は2雄以上を1つのケースで飼育することはタブー。但し人が挟まれても怪我をする事は滅多にない。累代飼育には温度管理が重要なため市街地一般家庭では比較的困難。試みる際には気温の上昇しすぎに十分注意する必要がある。

■■考察■■

一時に比べると採集圧こそ減少気味だが、かつての生息地は続々と宅地化,工業用地化して、本種の繁殖に必要な良好な雑木林の減少は進行中。また夏季の平均気温上昇に伴い、かつては生息地であった山間部であっても気温が高い地域では個体数は減少気味である。

■■備考■■

人気だが虚弱体質気味のミヤマクワガタ。成虫を飼育している場合8月も後半になると死んでしまうケースが良くあるが、新成虫を交尾をさせずに単独で飼育を続けると比較的長生きする。2002年~2003年にかけて、その条件プラス ①湿度低め、②温度低め、③飼育ケース小さめ(余計な運動させないため)、④一度に与える餌は少なめ・・・で飼育した際、冬を越して5月まで寿命を延ばした記録がある。

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»雄の頭部 »ミヤマクワガタ雌 »外灯に飛来したミヤマクワガタ雄

ノコギリクワガタ

Prosopocoilus inclinatus inclinatus(Motschulsky)

樹液に来たノコギリクワガタ♂

■■記事■■

県内の低地~山間部にかけて雑木林や河原などに多く生息する。最近は少し標高の高いところでも確認出来ているのは温暖化の影響を受けている可能性もある。灯火にも良く集まる。ミヤマクワガタと同所で観察できることも多いが、野外での成虫活動期間は本種の方が少し長い。累代飼育はとても簡単で産卵木や飼育マットなどを適にセットした飼育ケースで雄雌を飼育すれば次世代幼虫を得ることが出来る。怒った時に発揮するパワーは強大で複数の雄を同居させたり他種と同一のケースで飼育することは避けるべき飼育時の注意点である。

■■考察■■

生息地の減少はミヤマクワガタ同様だが繁殖に必要な環境はミヤマクワガタより適応範囲が広く生息数の著しい減少は見られないものの、良好な自然環境を保全することは重要課題。

■■備考■■

カブトムシと並んで子供達にも人気が高いノコギリクワガタ。雄の大型個体と小型個体では大腮の形状に著しい変化が見られるものの離島に生息する数種の亜種を除けば形状的な地域差は殆ど見られない。また稀に出現する極端に赤が強く出たり真っ黒なボディの個体については幼虫期の餌の成分に因るものと思われ地域差とは言い難い。

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»ノコギリクワガタ雌 »アスファルトにて »白台紙撮影の雄 »外灯に飛来した原歯型ノコギリクワガタ雄

コクワガタ

Dorcus rectus(Motschulsky)

樹液に来たコクワガタ♂♀

■■記事■■

県内低地から山地、時には市街地近くであっても適度な餌場と繁殖に必要な環境があれば生息している可能性がある。灯火にも良く集まり、時には他の昆虫の屍骸から体液を吸っているのを観察することもある。少々の乾燥にも強く飼育も簡単で新成虫であれば飼育下において2~3年は生きる。オスは最大で55㎜程度になりそのクラスになると体長もさることながら幅も出てきて風格ある個体となるが、52~53㎜を超える様な大型個体は野外でも飼育でも中々お目に掛かれない。

■■考察■■

ノコギリクワガタと同様に、最近かなり標高の高い所でも多く観察されているため、むしろ本種の生息域拡大によって他の昆虫に与える影響の方を懸念している(目に見えた影響は未確認)。しかし如何に環境変化に強いコクワガタと言えど繁殖環境が消滅すれば生息は不可能な状況に陥るため、市街地近辺や河川敷等であっても林や広葉樹は伐採しすぎず、また発生源である朽木は整理し過ぎず適度に残すことも重要である。

■■備考■■

本種にはハチジョウ、ヤクシマ、ミシマ、トカラと離島に生息する亜種がいる。また近縁種にスジクワガタとリュウキュウコクワガタが知られているが、オオクワガタ属コクワガタ亜属の1種である本種はオオクワガタとも近く、交配した場合は繁殖能力を持たない種間雑種が誕生する。

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»樹液に付くコクワガタ雄雌 »洞に潜むコクワガタ雄

スジクワガタ

Dorcus striatipennis(Motschulsky)

飼育下のスジクワガタ♂

■■記事■■

県内やや山間部を中心に生息している。生息地内の1本の木に集中して観察されることも多いことから移動範囲が小さい種の可能性がある。高標高地ではヤナギ類カンバ類ハンノキ類に付くことがありホストとなる樹種は多い様に思われる。また低地に近いほど大型になる傾向が見られる。繁殖は各種広葉樹の朽木で行われているが累代飼育は意外と難しく、生息地の状況から推測して高い気温に弱い可能性がある。オスは華奢で一見コクワガタに似ているがメスの形状的特長を見るとむしろヒラタクワガタに近い様にも思われる。小さい種でありながら凶暴な一面もあるため複数のオスを同居させた環境での飼育はあまりお勧め出来ない。

■■考察■■

コクワガタほど生息数は多くない。身体の大きさに関連してか餌となる樹液は少量でも問題なく僅かな樹液がにじみ出ているだけのホストでも生息可能で、また繁殖に至っては直径5㎝長さ30㎝に満たない様な朽木から幼虫を得ることもある。現状では生息数・環境共に劇的変化(悪化)は見られないものの、前述した通り生息地内の限られた木に集中する傾向もあるため、根こそぎ採集する行為は控えるべき。

■■備考■■

ドルクス系としては最小の部類に入るが大歯型のオスにはコアな愛好者を惹き付ける魅力があるスジクワガタ。オオクワガタほどでは無いにしても飼育下でなら2~3年生き、野外でも稀に大腮の磨り減った個体を観察することから自然環境においても成虫越冬する種の様です。また背中の筋が消失した中型以上のオスで大腮が磨り減ってしまった個体はコクワガタとの判断に迷う場合もあります。累代飼育を試みる場合には、使用する産卵木の加水を抑えた古めのものを使用することで成功した例がありますが、温度管理も重要で高温での産卵は難しい種の様です。

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»スジクワガタ雌 »樹液に付くスジクワガタ雄雌

ヒラタクワガタ

Dorcus titanus pilifer

山地の樹液に付くヒラタクワガタ♂

■■記事■■

県内低地および低山地を中心に広く観察することが出来る。稀にビックリする様な街中で見付かる事もある。生息地内の樹液に良く集まりそこから広範囲に移動することは少ない。夜行性が強いため昼間に観察するのは困難。灯火に来ることもあるが状況による。雄雌共に極めて力が強く大腮で指を挟まれた場合は出血する事もしばしばあるが襲う目的で人に向って来ることはないので採集時や飼育時に誤って指を挟まれる事にのみ注意する必要がある。また繁殖のために雄雌を同居させる場合も雄が興奮している時は雌を近づけるのを避けた方が無難。県内産の大型の雄は60㍉を超えるが65㍉をオーバーすることは殆ど無い。

■■考察■■

県内生息地の様々な樹種で幼虫を確認しており、ある程度の環境変化に対しては適応可能だと思われるが、一箇所の生息地から根こそぎ採集されるなどの採集圧が脅威となっている。また外来種との交雑個体が県内でも発見されており飼育者のモラル向上の対応も早急に必要。

■■備考■■

県内で採集されるヒラタクワガタを「本土ヒラタ」と呼ぶ場合がありますが、これはペットショップ等で販売する際に離島に生息する亜種と区別するために付けられた呼び名です。ところが実態をあまり把握していないペットショップやホームセンター等では「国産ヒラタ(本土とはまた別の呼び方)」と称して離島種であるサキシマヒラタやアマミヒラタを販売している場合があります。これらは県内産のヒラタクワガタとも交雑することが判っており外国産でなくとも交雑種となってしまいます。飼育の際の管理にはくれぐれもご注意下さい。

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»樹液溢れる洞に隠れるヒラタクワガタ雄雌 »ヤナギを登るヒラタクワガタ雄

アカアシクワガタ

Dorcus rubrofemoralus(Snellen van Vollenhoven)

ヤナギに付くアカアシクワガタ♂

■■記事■■

県内山地帯を中心に生息している。雄雌とも灯火に良く集まるが昼間もヤナギ等の樹液で観察することが可能。樹液に集まる木は年によって微妙に異なるもののある程度限られていて一本の木で複数個体観察されることが多い。幼虫,成虫とも下限でミヤマクワガタ,上限でヒメオオクワガタと混棲しており、幼虫は同じ発生木から発見されるものの成虫はホストとなる木のシチュエーションで棲み分けしている。

■■考察■■

かつて金沢市内に有る本種が生息していた低山地では、地球温暖化の影響なのかホストの消滅なのか、昨今は全くその姿を確認する事が出来なくなっている。一度絶滅に近い状態となってしまった野生生物を元に戻すことは限りなく困難であるため、本種の生息地に限らず自然環境保護には注力する必要がある。

■■備考■■

アカアシクワガタは繁殖意欲が旺盛な種で、ペアで飼育すると瞬く間に交尾を開始しその行為は延々と続く。累代飼育を試みる場合、産卵木にはこだわりが無い様で市販されているコナラなどの産卵木でも十分累代飼育が可能。また自然環境では白色腐朽材からでも赤褐色に腐朽した材からでも幼虫を確認している。しかし山地系の種であるため高温に弱く乾燥は厳禁だがあまりの高湿度も適さない。よって夏場は風通しが良く極力涼しい場所で飼育する必要がある。

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»ヤナギの樹上で交尾 »外灯に来たアカアシクワガタ雌 »雨天でも条件が合えば外灯に飛来する

ヒメオオクワガタ

Dorcus montivagus montivagus(Lewis)

ヤナギに付くヒメオオクワガタ♂

■■記事■■

県内の高山地帯を中心に生息している。アカアシクワガタと混棲していることが多いが本種の方が高標高にまで分布している。またアカアシクワガタより若干乾いた環境を好む傾向があるものの、それ以上に優良なブナ林の存在が生息する上での絶対条件。寒さに強く発生まもない時期に大腮が磨耗したり折れたりした成虫が観察出来ることから自然環境でも成虫越冬する種だと想定出来る。累代飼育は少々困難で黒土を利用した生育報告やコナラ材を利用した生育報告があるがオオクワガタ等と同じ環境においても時として産卵することもあるため産卵を促す絶対的な条件は別途研究する余地がある。

■■考察■■

生息に特定条件(優良なブナ林が不可欠等)をもつ本種については現状の生息範囲や生息数だけに満足する事無く常に状況を観察し現状把握に努める必要がある。かつて本種の大産地として知られていた地域(県外)では強大な採集圧による生息数の激減と一部環境破壊をも招いてしまった例もあるため、採集者のモラル向上も必要かも知れない。

■■備考■■

交尾はするものの飼育下においては中々産卵してくれないヒメオオクワガタ。雄は本種の特徴の一つである長い足を巧みに使い雌に覆い被さる様な体勢で交尾するが、雌が交尾を拒絶する場合も多く、逃げ道の無い飼育ケースの中では拒絶された雄に雌が挟み殺される状況が頻発する場合がある(ミヤマクワガタやノコギリクワガタ等、他のクワガタ類もこの点は共通している)。累代飼育を試みる場合でも必要以上に長い期間雄雌を同じ容器で飼育するのは避けるべきである。因みに低地での飼育でも夏場の超高温多湿をクリアーすれば累代飼育は思った程難しくない。

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»林道を歩くヒメオオクワガタ雄 »林道を歩くヒメオオクワガタ雌 »ヤナギを齧るヒメオオクワガタ雌

オオクワガタ

Dorcus curvidens binodulosus

飼育下のオオクワガタ♂

■■記事■■

野外において、雄は20~75mm程度、雌で20~50mm程度、飼育下では雄は80mmを超える国内最大級のクワガタムシ。飼育方法が確立されており野外採集意外での入手も簡単なため愛玩動物としての側面も持つ。しかし野外生息地と野外個体については乱獲と放虫、外国産オオクワガタとの交雑種問題など多くの問題を抱えており、開発による生息地縮小も絡み安定した生息が危ぶまれている。

■■考察■■

近年では様々な噂と憶測・雑誌等による情報が飛び交う中、本会でも実際に複数の個体採集に成功してはいるが、一部の採集地は他のクワガタ類の有名採集地にも関わらずこれまで全く本種の採集記録が無い地域であるため、採集個体の中には逃走・放虫個体が混ざっている可能性が非常に高い。昆虫ブームの高まった1990年代以降の記録については常にその疑問が付いて回るものの、しかし各種環境・条件から本種が生息可能と推測した地域でも初採集,追加採集出来ており、本県ラベルのオオクワガタが絶滅したとは必ずしも断言は出来ない。 尚、かつて本会内に閉じて保有していた昭和40年代の石川県内での採集記録については、いしかわレッドデータブック動物編2009編集時に依頼され、標本データと伴に情報開示している。

■■備考■■

野生動物としての人気もさることながら手軽に飼育出来る愛玩動物の一つに加わりつつあるオオクワガタ。形状や目の色などをブリード技術によって固定化するための様々な研究をプロのブリーダーだけでなくアマチュアレベルでも盛んに行われる様になりました。学校で習ったメンデルの法則を思い出しながら、気に入った個体を飼育するのもこの趣味の楽しみ方の一つ。但し飼育に挑む場合は飽きずに最後までちゃんと面倒を見て、間違っても逃したりしないようしっかり管理して頂きたい。

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»レッドデータブック石川県版に情報提供した標本

ネブトクワガタ

Aegus laevicollis subnitidus

樹液に来たネブトクワガタ♂

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交尾時以外の動作が非常に遅く比較的素早く動く交尾時についても雄雌が出会って以降の動作であるため異性に出会わず一生を終える個体も多いのかも知れない。とすると一つの生息地において継続的な繁殖が可能となる頭数は同フィールドに生息する他のクワガタムシに比べて多くを必要するとも想定出来る。本種の幼虫生育には特定条件の餌が必要であるため、それらの条件が合致している現在の生息地を何らかの形で保護して行く必要がある。

■■考察■■

県内低地及び低山地に点在する限られた場所に生息している。生態面で県内の低地・低山地に生息している他のクワガタムシと少々異なる面があり本種の生息地の確認を困難にしている一因となっている。大産地では外灯下に良く飛来するとの報告もあるが、本県においては生息地の状況から推測して外灯下で本種を観察することはあまり期待出来ない。現状の生息地調査結果は県内全域をくまなく実施したものとは言えないと思われるため、県内に生息する本種の生態的特徴を考慮した調査を実施する必要がある

■■備考■■

小さいながらもそのフォルムに惹かれるファンが多いネブトクワガタ。動作が緩慢で性格的にもおとなしい種のようで他のクワガタムシと異なり雄同士であっても争う姿はあまり。雄は立派な大腮を持っており大型のものになるとかなり見応えがあるが、その先端は丸く湾曲したヘラの様な形状をしており他種のそれの様な鋭さは全く無いため、ホストの木を削って樹液を出す目的には向かないと思われる。飼育下では交尾時に雌を押さえ付けるために使用していた様子を観察できたものの、それ以外の使用用途やこの形状に進化した理由等は今後も引き続き観察してみないと判らない。

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»ネブトクワガタ雌

オニクワガタ

Prismognathus angularis angularis Waterhouse

外灯に飛来したオニクワガタ♂

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県内高地に生息している。幼虫は古めの倒木にて複数頭まとめて観察出来ることが多く、良く言われる黒色に腐朽した材に限らず白色腐朽した材にも多く穿孔している。また活動期間が短い(飼育下では3週間程度)成虫を野外で観察出来るのは稀だが条件が合えば外灯下にも飛来する。幼虫は主にブナ林の広葉樹をホストとしているが飼育ではクヌギやコナラのフレークを使った発酵マットでも十分に生育し羽化した。成虫は後食するのかどうか不明(飼育下で昆虫用ゼリーなどの市販の餌やバナナやリンゴ等の果実を与えてみたが食べた形跡は見られない)。

■■考察■■

ホストも多様で現状では生息数も多いのだが、ブナ帯を生息地としている本種には地球規模の温暖化・砂漠化が一番の脅威。広葉樹の伐採や針葉樹の植林地拡大を控えるとともに登山ブーム等にも何らかの措置が必要か。

■■備考■■

雄は上向きで独特の形状をした大腮を持ち、如何にもゴツイ印象を受けるオニクワガタだが、画像イメージとは異なり上翅は薄く柔らかく触覚やフ節も繊細で、天寿をまっとうした個体は自然とバラバラになってしまい標本として残すには少し一苦労…。

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»白台紙撮影の雄 »オニクワガタ幼虫

ルリクワガタ

Platycerus delicatulus delicatulus Lewis

蛹室のルリクワガタ♂

■■記事■■

県内高地に生息している。野外活動をしている成虫を見掛けることは殆ど無く活動期間等の詳細および生態は殆ど不明。幼虫は広葉樹の太めの立ち枯れ又は倒木で観察できる。終齢幼虫は初秋の頃に蛹化~羽化する。幼虫が生息していた倒木等の一部を持ち帰り、ミキサー等でフレーク状にしたものをフィルムケースに詰めた環境で飼育したところ自然下と同様に初秋に羽化し、翌年春まで蛹室内で休眠した。また秋に羽化した個体を取り出し雄雌近付けるとすぐさま交尾活動を行うことを観察している。成虫は何らかの後食を摂っていると思われるが野外での後食活動は未確認。飼育ではコルリクワガタも含めリンゴが有効である。

■■考察■■

生息域が同じオニクワガタと、ほぼ共通している。

■■備考■■

雌の脚は黒いと一部で固定化された表現が用いられているルリクワガタだが石川県内では基部(腿節)を除いた部分が赤褐色の個体も多く観察出来る。

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»野外活動中のルリクワガタ雌 »ルリクワガタの産卵痕

キンキコルリクワガタ

Platycerus acuticollis acuticollis Y.Kurosawa

ブナの新芽に付くコルリクワガタ

■■記事■■

県内高地に生息している。成虫は初夏の頃の非常に短い期間だけ野外において人目に触れる場所で活動するが、実際にはもう少し長い期間、野外活動をしている可能性がある。ルリクワガタと姿は似ているが比較すると雄はルリクワガタの方がガッシリした印象を受け、雌では本種の方が丸っこい印象を受ける。幼虫は落ち枝や細めの倒木でも観察出来る。ルリクワガタと同じ様な環境で飼育を試したところ全く同じ様に羽化することを確認した。

■■考察■■

生息域,課題点とも、オニクワガタ,ルリクワガタとほぼ同様。日本を代表する森林であるブナ林は非常に多くの動植物を育んでおり、人間にとっても様々な恵みをもたらす重要な役割を担ってくれていることを再認識する必要がある。

■■備考■■

ブナの新芽に潜り込んで採餌,交尾をすることで有名なコルリクワガタ。実際にはブナ以外のタラノキやコシアブラ等の新芽でも見掛けることがあるため、成虫が齧る樹木の種類は意外と多いのかも知れない。

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»キンキコルリクワガタ雄 »キンキコルリクワガタ雌 »ルリクワガタとの相違点

マダラクワガタ

Aesalus asiaticus asiaticus Lewis

白台紙撮影のマダラクワガタ

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県内高地に生息している。野外活動中の成虫を観察したことは一度も無く生息地の赤褐色に腐朽した倒木等でのみ観察出来ているのだが、成虫を掌にとって観察していると擬死のために畳んでいた脚を伸ばしだし、活動を始め、やがて指先などの先端に辿り着くとまるでテントウムシの様に飛立つ。飛行姿勢にぎこちなさは感じられず前翅,後翅とも退化した様子は無いことから自然下においても何らかの条件で飛翔するケースがあると思われる。

■■考察■■

生息地はブナ帯の赤褐色に腐朽した材(主に細枝)でのみ生息を確認している。褐色腐朽菌は針葉樹に作用することが多く自然下において広葉樹が赤褐色に腐朽するには特定の菌類が作用する必要があると思われる。実際の生息地内で赤褐色に腐朽した材はそれ程多くないが、本種はアセビやツバキ等の常緑樹の腐朽材でも幼虫・成虫とも確認出来る。

■■備考■■

テントウムシほどの大きさしかないマダラクワガタを採集するには発生木を崩す方法が有効だが大型種を探す要領で削ると絶対に見付からない。マダラクワガタだけでなく小型種狙いの材割りは慎重を期す必要があるが褐色腐朽木を割る際には色味の紛らわしさも手伝うため特に気を付ける必要がある。

ミヤマツヤハダクワガタ

Ceruchus lignarius monticola Nakane

褐色腐朽材から出たミヤマツヤハダクワガタ

■■記事■■

県内高地に生息している。生息環境はマダラクワガタに良く似ているがマダラクワガタに比べるとカツラ等の大木を好み生息地の赤褐色に腐朽した倒木で観察出来る。一本の発生木にて複数頭見付かる事が多いが幼虫の数に比べて成虫が見付かる割合は低く、見付かった成虫も死骸である場合が少なくない。幼虫や蛹(蛹室)が穿孔している場所の特徴として、発生木内部の柔らかい部分と固い芯の様な部分の境に列を成すように複数頭が穿孔しているケースに遭遇する場合が多い。倒木等は上部は乾燥して硬い場合が多いが下部は比較的柔らかい場合が多いため、倒木を引っ繰り返したり底部分を割ってみたりするなど工夫してみる価値はある。

■■考察■■

生息域が同じマダラクワガタと課題点もほぼ共通している。

■■備考■■

オニクワガタやマダラクワガタ同様に成虫は後食せず水分摂取のみで活動出来ると思われるツヤハダクワガタ。か細いその脚は餌を求めて探し回るには不向きで、また膨らんだその腹部は栄養を溜め込んでいる様にも思われる。

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»白台紙撮影のミヤマツヤハダクワガタ雄 »白台紙撮影のミヤマツヤハダクワガタ雌 »目立つ腹部

チビクワガタ

Figulus binodulus Waterhouse

白台紙撮影のチビクワガタ

■■記事■■

2004年後半にフィールドを散策していて発見したため生態はおろか本種であることの同定すら出来ていないが各種図鑑に記載がある特徴より本種であろうと推測している。発見場所から推測すると生息が確認されているお隣の福井県より流入してきた可能性が高いと推測出来るものの、流入ルート等の詳細については調査不足。

■■考察■■

以前より本県に生息していたのか、最近になって流入し定着したのかなど全てにおいて調査不足。複数箇所で複数頭を観察出来ているため今回採集出来た場所を中心に、生息域や生態など調査する予定だが意外と広範囲に生息している可能性もあると推測している。2013年年末の調査では2004年に確認したピンポイントの場所は既に生息に適さない状況になっていたが、山間部寄りに新たな生息地を確認したことでほぼ定着しているものと推測する。生息はコナラの倒木で確認。樹皮を捲った木肌との隙間で数頭が固まっており、材に深く潜っている個体はいなかった。

■■備考■■

クワガタムシ科には珍しく成虫が動物性タンパク質を主な栄養源としている本種。飼育にドッグフードを用いるとの報告もある。